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事業等のリスク

エディタV2

当社及び当社グループの事業その他に関し、経営者の判断において、留意が必要と考えるリスクは、以下のとおりです。その他のリスクを含む、リスク管理態勢の整備の状況については、「リスク管理」にて、記載しております。なお、本項における将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社では、中期的に最も注意が必要な当社グループのリスクを「トップリスク」として洗い出し、適切な管理に努めるとともに、今後の環境変化により当社グループ各社において重要となりうるリスク(エマージングリスクを含む)にも留意しております。
当社グループのトップリスクについては、以下のとおり認識しております。

①金融市場・信用・流動性
  • 金融市場の急変や急激な景気後退による資産価値の毀損、流動性の悪化、金利上昇が与える生命保険事業の健全性悪化への多大な影響 等
②保険引受・パンデミック・大規模災害(気候変動に起因するものを含む)
  • パンデミック・大規模災害(気候変動によるものを含む)等の発生による業務中断、資産の毀損等(オペレーショナルにも影響)
  • 大規模災害発生による保険金支払い 等
③オペレーショナル・情報セキュリティ
  • システム障害、(当社グループ及び委託先への)サイバー攻撃等による顧客情報の大量漏洩・業務中断 等
④コンダクト・コンプライアンス・企業風土
  • 不正行為・社会慣行に反する行為及び法令違反による企業価値の毀損 等
⑤規制環境・社会環境
  • 社会環境変化への対応遅れ(新たな技術や消費者志向変化への対応遅延による競争力低下) 等

なお、当社では、ロシア・ウクライナ情勢、中東情勢、米中対立に関する当社グループへの影響について、以下のとおり評価しております。
ロシア・ウクライナ情勢及び中東情勢に関しては、当社グループの当該地域向けのエクスポージャーが限定的であることから、直接的な影響は、軽微なものとなっております。
米中間の経済安全保障上の摩擦に関しては、両国に所在している業務委託先(再委託先を含む)と当社グループの関係等において、現時点で大きな影響は生じておりません。
上記を含む様々な地政学的な緊張の高まりに起因する各種発生事象に関しては、金融市場の動揺や投資先・与信先の信用力低下等が発生し、経営状況の悪化につながる可能性など、予断を許さない状況が続くと想定しておく必要があると認識しております。また、一部サービスの停止による企業イメージの悪化や業務委託先(再委託先を含む)の見直しに係る追加費用の発生などの間接的な影響を含め、以下に記載したリスクが顕在化する引き金となる可能性もあるものと留意しております。

1.事業に係るリスク

(1) ソニー生命による個人向け生命保険の販売が当社グループの事業の大きな割合を占めていることによるリスク
ソニー生命は、当社の他の子会社に比べ長い歴史があり、当社グループの収入及び利益の大きな割合を占めております。個人向け生命保険市場に影響を及ぼす要因には一般的に下記のようなものがあります。

  • 日本における就業率及び世帯収入といった指標
  • 他の貯蓄・投資商品の相対的な顧客訴求力
  • 保険会社の財政状態や信頼性に対する一般的認識又は風評
  • 長期的に日本の人口構成に影響を与える出生率、高齢化などの傾向

これらの変化やその他の要因により、個人向け生命保険の新規契約減少、保険契約の解約の増加、収益性悪化が起こり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

経営計画等に関するリスク
当社グループは、経営計画の策定にあたり、市場環境、経営環境等に関する多くの前提を置いておりますが、経営計画を遂行する中で、策定時の前提どおりとならない場合や、経営計画に係る進捗状況の管理や対応が不十分である場合には、経営計画における目標を達成できず、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(3) 責任準備金の積立不足に関するリスク
生命保険事業及び損害保険事業においては、保険業法及び保険業法施行規則に従い、将来の保険金・給付金の支払いに備えた責任準備金を積み立てております。これらの責任準備金は、保険契約の保障対象となる事象の起こる頻度や時期、保険金・給付金の支払額、保険料収入を原資に購入される資産の運用益の額など、多くの前提と見積もりに基づいて計算されております。これらの前提条件と見積もりは本質的に不確実なものであるため、最終的に保険金・給付金としてソニー生命及びソニー損保が支払うべき金額や支払時期、又は保険金・給付金の支払いより前に、保険契約債務に対応した資産が想定していた水準に達するかどうかを正確に判断することは困難です。保険契約の保障対象となる事象の頻度や時期及び支払う保険金の額などは、以下のようなコントロール困難な多くのリスクと不確実な要素に影響されます。

  • 死亡率、疾病率、解約失効率、自動車事故率、事業費率など、計算の前提と見積もりの根拠となる傾向の変化
  • 信頼に堪えるデータの入手可能性及びそのデータを正確に分析する能力
  • 適切な料率・価格設定手法の選択と活用
  • 法令上の基準、保険金査定方法、医療費及び自動車修理費用水準の変化

当社グループの実績が、計算の前提条件や見積もりよりも大きく悪化した場合などには、責任準備金の積立が不足する可能性があります。また、責任準備金の積立水準に関するガイドラインや基準などに変更があった場合には、より厳しい計算の前提や見積もり、又は保険数理計算に基づいて責任準備金の積増しが必要となる可能性があります。これら責任準備金の引当額の増加は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
なお、ソニー生命及びソニー損保では、適切なリスクの分散などの観点から、再保険を活用しております。再保険に係るリスクに関しては、保有・出再方針に基づき、保有限度額を超過する引受リスクが適切にカバーされているか等の管理を行っておりますが、出再先のカウンターパーティリスクの顕在化などにより、再保険金を回収できない可能性があります。

(4) 医療技術等の進歩に関するリスク
保険事業においては、がん診断技術や遺伝子診断技術など、医療に関する技術が革新的に進歩することにより、相対的にリスクの高い顧客の加入傾向が高まる逆選択加入のリスクが増加するなど、保険金等の支払いが増大する可能性があります。
このような事態は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(5) 人材の確保・育成に関するリスク
当社グループは、ソニー生命のライフプランナー(営業社員)をはじめ多数の従業員を雇用しており、有能な人材の維持・確保及び育成に努めております。
一方で、人事労務管理やダイバーシティへの対応等が不十分であることに起因して離職率が増加した場合は、十分な人材の維持・確保及び育成ができなくなることも考えられます。このような事態は、当社グループの業務運営や、業績及び財務基盤に悪影響を与える可能性があります。

(6) 株価変動に係るリスク
株式相場の下落により有価証券の評価損若しくは売却損が発生し、又は有価証券の売却益若しくは未実現利益が減少する可能性、あるいは、最低保証に関する責任準備金の積立が増加するリスクがあり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。ソニーフィナンシャルベンチャーズでは、未上場の株式等を裏付資産とするファンドに投資をしております。未上場株式には、上場株式と同様のリスクがあるだけでなく、流動性が低く、適時の換金が困難であること、大企業に比べて、経営の安定性が低いこと等のリスクがあります。

(7) 金利変動に係るリスク
当社グループでは、各事業の負債の状況に鑑み、運用資産を適切に管理するため、資産負債管理(以下「ALM」)を行っております。当社グループのALMは、長期的な資産負債のバランスを考慮しながら、安定的な収益の確保を図ることを目的としております。特に、ソニー生命においては、通常、契約者に対して負う債務の期間が、運用資産よりも長期であるため、ALMはより難しいものとなっております。ソニー生命では、長期の債券への投資を増やすことにより、金利環境の変化に応じたALMを行っております。しかし、当社グループがALMを適切に実行できなかった場合、又は市場環境が当社グループのALMによって対処しうる程度を超えて大きく変動した場合には、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。たとえば、ソニー生命は契約者にお支払いいただいた保険料の一部を、将来の保険金等の支払いに備えて責任準備金として積み立てており、この責任準備金は一定の利率により毎年運用されることを前提としております(この利率のことを「予定利率(責任準備金計算用)」という)。
金利低下局面(マイナス金利を含む)においては、投資利回りの低下により投資ポートフォリオからの収益が減少し、予定利率(責任準備金計算用)の設定に際して想定した収益を充足できず、逆ざやが発生・拡大する可能性があります。
金利上昇局面においては、投資利回りの上昇により投資ポートフォリオからの収益が増加する一方で、保険契約者が他の高利回りの投資商品を選好する結果、保険契約の解約率も上昇する可能性があります。また、金利の変動により、保有資産のうち固定利付債券について評価損が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ソニー損保の終身医療保険に関して、上述のソニー生命と同様のリスクがあります。
ソニー銀行の資金運用収益は、貸出金や債券の利息収入が大きな部分を占めております。今後、金利の上昇が続き、預金利息の金利の上昇が債券投資やその他の運用から得られる利回りの上昇を上回った場合、業績に対し悪影響を与えることがあります。また、金利の予想外の変動が、ソニー銀行が保有する固定利付債券の時価や金利デリバティブ商品の損益に悪影響を与えることがあります。更に、ソニー銀行の住宅ローンにおいても、金利が上昇することにより、借入需要が減少することが考えられます。

(8) その他の投資ポートフォリオに係るリスク
安定した投資収益を確保するため、当社グループでは内外公社債、国内株式、貸付金、不動産など、様々な投資資産を保有しております。金利及び株価変動リスクに加え、当社グループの投資ポートフォリオは、下記に掲げる様々なリスクに晒されており、そのようなリスクが業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

  • 為替リスク:ソニー生命及びソニー銀行が保有する有価証券には外貨建のものが含まれております。ソニー生命の外貨建保険については、同一通貨建ての有価証券などで運用すること等により、為替ヘッジを行っておりますが、そのヘッジが効果的である保証はありません。また、資産運用の一環として、為替ヘッジをせずに外貨建の有価証券に投資することがあります。ソニー銀行は、外貨預金から発生する外貨建の負債に関するリスクは、当該通貨に見合う形で外貨建資産を保有することで、為替ヘッジを行っております。また、それ以外の外貨建債券の大部分についても為替ヘッジを行っておりますが、そのヘッジが効果的である保証はありません。これらの外貨建投資により、また、ソニー銀行が投資活動の一環として保有しているデリバティブ商品に係る為替リスクにより、為替レートの動向によっては、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 信用リスク:保有債券の発行体について格付けの引下げがなされるなど信用力が低下し、当社グループの保有債券の市場価格に悪影響を及ぼし、その結果、有価証券の評価損が発生し、有価証券の売却益が減少し若しくは売却損が発生し、又は未実現利益が減少する可能性があります。また、保有債券の発行体による元利金の支払いが債務不履行となる可能性もあります。更に、市場リスクをヘッジするために行っている金利スワップ、通貨スワップ、為替先物、株式指数オプションなどのデリバティブ取引についても、カウンターパーティリスクがあります。当社グループの保有債券の発行体の信用力が低下し、かかる債券の元利支払いについて債務不履行が生じた場合、又はデリバティブ取引上のカウンターパーティの義務について債務不履行が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
  • 不動産投資リスク:不動産関連収益は、様々な要因によって発生する不動産価格及び賃貸料の低下や空室率の上昇などにより減少する可能性があります。

(9) 流動性リスク
当社グループは、生命保険事業及び損害保険事業における保険金、給付金及び解約返戻金の支払い並びにその他の支払いや、銀行事業における預金の引き出しに備え、流動性を確保する必要がありますが、当社グループでは、それぞれの事業の特性に応じて、適切な流動性の管理に努めております。また、当社グループでは多額の流動性資産を保有しておりますが、一方で貸付金や不動産、未上場株式などのように、流動性が低い資産や、ほとんど流動性がない資産も保有しております。当社グループ各社において、たとえば想定外の保険契約の解約が起こった場合、又は金融市場の混乱や自然災害が起こった場合などで、急遽多額の現金支出が必要となった場合には、各社の流動性が不足する部分について、それらの資産を不利な条件で売却せざるを得ないこともありえます。このような事態は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(10) 財務基盤の悪化に関するリスク
当社グループ各社の競争上の優位性を確保するにあたり、財務基盤は重要な要素となります。財務基盤を測る業界共通の指標として、ソニー生命及びソニー損保が属する保険業界ではソルベンシー・マージン比率、ソニー銀行が属する銀行業界では自己資本比率が普及しており、これらが著しく低下した場合には、早期是正措置により、金融庁長官から業務の全部又は一部停止等を含む様々な命令を受けることとなり、その結果、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社、ソニー生命及びソニー銀行は、格付会社より格付けを取得しており、当社グループの収益性や財務基盤の悪化により格付けが引き下げられ、当社グループの事業や資金調達の条件などに悪影響を及ぼす可能性があります。格付け変動の要因として、当社グループの収益性や財務基盤の悪化のみならず、国や親会社の格付けの影響を受ける可能性もあります。

(11) 事務リスク
当社グループの事業においては、以下のものを含む様々な事務プロセスが行われております。

  • 保険料の請求及び保険金・給付金、解約金等の支払いを含む、当社グループの保険契約の管理
  • 当社グループの銀行事業における貸付金及び預金の管理・回収など、銀行間取引の管理及び実行
  • 有価証券への投資並びにデリバティブ取引、為替取引及びその他の取引の実行を含む、当社グループの投資
    ポートフォリオの管理
  • 資金決済

当社グループの事業には、当社グループの内部的な事務プロセスに係る過失、不正行為、機能不良などの問題によって損失を被る事務リスクが伴います。事務リスクを特定し管理する取組みの一環として、当社グループは大量かつ増加しつづける様々な取引及び事象を正確に記録し、検証する手続を構築し、実行しなければなりません。当社グループの事務リスク管理が失敗した場合又は有効でなかった場合などにおいて、上記事務プロセスの適切な実行に影響を与える重大な過失、不正行為、機能不良などの問題が生じたときは、当社グループが損失を被り、それにより業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(12) システムリスク、情報セキュリティリスク
当社グループが保有している情報システム及び外部委託先の情報システムには、インターネットを利用したマーケティング販売チャネル、ポートフォリオ・マネジメント・ツール、保険契約管理や預金・貸出金管理、カード決済/クレジット決済、統計データ、個人情報を扱うバックオフィスシステムなどがあります。顧客からの申込受付・支払いその他の取引などを適切に処理できない場合を含め、サイバー攻撃等によるインターネットやシステムの障害・停止、システム企画・開発・運用が不十分なこと等を原因とする直接・間接のコストの発生は、業務に重大な影響を与える可能性があります。そのような事態は、業務の遅延による顧客の不満、ひいては行政処分、損害賠償訴訟などにつながり、当社グループのイメージの悪化、収入・手数料その他の事業機会の減少をもたらす可能性があります。当社グループや外部委託先、提携先のITその他のシステムは、下記のような様々な障害により影響を受ける可能性があります。

  • ネットワークやシステムアーキテクチャにおける欠陥及び誤動作を含む、ハードウェア・ソフトウェアの欠陥及び誤動作
  • 想定を超えた利用量
  • 事故・火災・自然災害
  • 停電
  • サイバー攻撃、人為的な過失、サボタージュ、ハッキング・破壊活動など
  • マルウェア、コンピューターウイルス

(13) 重要な業務の外部委託先に係るリスク
当社グループは、下記のような業務を第三者に委託しております。

  • 主要な情報システムの開発・保守・運用
  • カスタマーセンターの電話・情報管理システムの開発・保守・運用
  • 顧客・株主向け各種変更通知などの印刷・発送
  • ソニー生命の保険事務関連書類のデータエントリー
  • ソニー損保の契約者が事故にあった場合のロードサービス、損害調査サービス・ソニー銀行の口座保有者に対するATMサービス
  • ソニー銀行のカードローンに関する借入人の信用評価と保証サービス
  • 文書保管
  • その他バックオフィス業務

これらの業務に関し、外部委託先が効率的にかつ合理的なコストで業務を継続し、当社グループの事業の拡大にあわせて適切に業務を拡大できるという保証はありません。システム停止や処理能力超過、地政学リスクの顕在化などによりこれらのサービスが停止した場合、当社グループが顧客に対しサービスを提供できないこととなり、当社グループのイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。更に、当社グループはかかるサービスの代替手段を速やかにかつ合理的なコストで導入することができない可能性があり、その場合、追加的な費用が発生する可能性があります。これらの理由により、かかるサービスの停止が当社グループの事業及び業績に悪影響を与える可能性があります。

(14) 個人情報漏えいに関するリスク
当社グループは、外部委託先に委託しているものも含め、オンラインサービス及び集中的なデータ管理を広範囲で活用していることから、安全な機密情報の維持・伝達が重要となっております。顧客・株主情報の紛失・漏えい、盗難、当社グループあるいは外部委託先、提携先のITその他のシステムにおけるセキュリティ侵害が起こらない保証はありません。当社グループが個人情報を紛失した場合や、第三者が当社グループ、提携先、外部委託先などのネットワークセキュリティを破り顧客・株主の個人情報を不正利用した場合などには、当社グループに対し訴訟を提起される可能性があり、また企業イメージが悪化する可能性があります。当社グループの役職員による顧客・株主情報の紛失、漏えい、不正利用についても同様です。顧客・株主情報の紛失、漏えい、不正利用、その他セキュリティの侵害は、当社グループの信頼性の低下につながり、事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(15) 従業員、代理店、第三者の供給業者又は顧客の不正により損失を被るリスク
従業員、代理店、第三者の供給業者及び顧客による詐欺やその他の不正、たとえば、違法な販売活動、詐欺、なりすまし犯罪、個人情報の紛失などにより損失を被るリスクがあります。特に、ソニー生命のライフプランナーや代理店、並びにソニー銀行の銀行代理業者はそれぞれ相当程度の裁量をもって活動しており、顧客と直接の関係を持ち、その個人的・経済的情報を知りうる立場にあります。更に、一部の第三者の供給業者も顧客に関する個人的・経済的情報を知りうる立場にあります。
また、顧客も、口座の不正利用や口座開設における虚偽の個人情報の申告など、詐欺的行為を行う可能性があります。こうした詐欺的行為は事前に防止、察知することが困難であり、またその損失を回復することは困難です。これらの行為により当社グループのイメージも悪化する可能性がありますが、特に、顧客がマネーローンダリングやその他の違法行為のために口座を利用した場合、当社グループのイメージは大きく悪化し、多大な法的責任を負う可能性があり、また行政処分の対象となる可能性があります。

(16) 先端技術やSNS等に起因して不適切事象が発生するリスク
情報通信技術の変化の勢いは加速し続け、クラウドコンピューティングやブロックチェーン、人工知能(生成AIを含む)等の先端技術は、大きな機会を提供するだけでなく、同時に新しいリスクを生み出しております。当社では、先端技術やSNS等に関しては慎重に管理するようにしておりますが、下記の要因等により、当社の業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。

  • 先端技術の誤作動や不備等による事務事故
  • 生成AI等の先端技術の悪意のある利用
  • 当社の経営状況等に関するフェイクニュースの流布(SNSでの拡散を含む)

(17) 法令違反に関するリスク
当社グループの事業はいずれも、厳格な法的規制及び監督を受けております。そのため、法令違反などが発生した場合、当社グループの各社が、罰金、課徴金、業務改善命令、業務停止命令、許認可の取消し等の処分を受ける可能性があります。
特に、保険業法及び銀行法等に基づく下記の許認可等は、当社グループの主要な事業活動の前提であり、当該免許に期限はなく、当連結会計年度末現在、当該許認可等が取消しとなるような事由の発生は認識しておりませんが、将来において免許が取り消される等の事態が生じた場合には、その会社は事業の継続が出来なくなり、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。

[当社グループが受けている主な許認可等]

許認可等の名称 根拠条文 会社名 有効期限 許認可等の取消事由等
保険持株会社の認可 保険業法第271条の18第1項 当社 なし 同法第271条の30第1項
銀行持株会社の認可 銀行法第52条の17第1項 当社 なし 同法第52条の34第1項
生命保険業の免許 保険業法第3条第4項 ソニー生命 なし 同法第132条第1項、第133条、第134条
損害保険業の免許 保険業法第3条第5項 ソニー損保 なし 同法第132条第1項、第133条、第134条
銀行業の免許 銀行法第4条第1項 ソニー銀行 なし 同法第26条第1項、第27条、第28条

また、当社グループの各社は共通のブランドを用いて事業を行っているため、ある事業において法令違反などが発生した場合には、当社グループの事業全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

(18) 訴訟等に関するリスク
当社グループは、保険事業・銀行事業を中心に各種金融サービスを提供しておりますが、これらの業務遂行の過程で、当社グループに対し、顧客等から訴訟その他の法的手続を提起又は開始される可能性があります。また、人権侵害を含む人事労務管理や安全衛生管理の不備等に起因して、当社グループの従業員から訴訟等を提起される可能性もあります。
当社グループに対し訴訟等を提起された場合、その結果によっては、当社グループの企業イメージや、事業及び業績に悪影響を与える可能性があります。

(19) リスク管理方針及びリスク管理マニュアルが予期せざるリスクに対し適正に機能しないリスク
当社グループのリスク管理は、流動性リスク及び投資活動に関連したその他のリスクに加え、事務リスク、システムリスク、情報セキュリティリスク、保険引受リスク、リーガルリスク、内部不正リスク、風評リスク、事業継続リスク及び気候変動リスクなどを含めた一連のリスクに対処することを企図しております。しかし、当社グループが商品やサービスを多様化し、顧客基盤を拡充するに伴い、これらのリスクを管理するために必要なシステム及びリスク管理の改善を行うことが困難となる可能性があります。リスク管理方針及びリスク管理マニュアル等は、事業に伴う様々なリスクに関連した損失防止に有効でない可能性があります。
これらの方針やマニュアル等が有効に機能しない場合には、当社グループの業績に多大な悪影響を及ぼし、損失を生じさせる可能性があります。

(20) ヘッジ全般に関するリスク
当社グループでは、経営の安定性を高めるため、上述した観点以外でも、適宜リスクヘッジを実施しております。
再保険を含むリスクヘッジの実施に際しては、企図した効果が得られるように留意しておりますが、想定通りの効果が得られる保証はなく、結果として、(機会)損失の発生・拡大につながってしまう可能性があります。また、想定した通りのヘッジ効果が得られた場合でも、異なる方法で評価すると、損失の発生・拡大につながっているという可能性もあります。たとえば、EVなど、経済価値ベースの企業価値の変動をヘッジした場合、企業会計に基づく期間利益の変動が大きくなる可能性があります。

(21) IFRSの適用に関するリスク
当社は、将来的なグループ連結ベースでのIFRS適用に向け、影響度の調査や課題の洗出等を含めた態勢整備を進めておりますが、適用時には、当社グループの業績等の実体に変動がない場合であっても、収益の認識、資産・負債の評価など各種会計処理方法が変更されることに伴い、当社グループの業務運営や財務状況、ソルベンシー・マージン比率、自己資本比率に悪影響を及ぼす可能性があります。

(22) 当社株式に関するリスク
当社は、親会社であるソニーグループ株式会社による当社のパーシャル・スピンオフ(以下「本スピンオフ」) の実行及び当社株式の上場に向けて準備を開始しております。本スピンオフは、ソニーブランドの継続活用を実現しつつ、当社の財務柔軟性を高め、成長投資への道を開くものと考えております。
しかし、上場企業としてより効率的な資金調達及び業務運営が常に成功するとは限りません。
また、当社に対する同意なき買収(株式公開買付け)が成立した場合、新たな株主や経営陣の支配下で企業の戦略方針や企業文化が変更となり、経営陣・幹部の変更やソニーブランドの使用権の喪失等によって、従業員の不安・不満の誘因や、業務プロセス・ITシステムの統合等の多大な負荷など様々な問題が生じる可能性があります。これらの結果、本スピンオフが想定通りのメリットをもたらさなかった場合、企業価値の低下や当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。本スピンオフの詳細については、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。

2.業界に係るリスク

(1) 競争状況に関するリスク
金融業界は、激しい競争状況におかれております。更に近年、異業種による金融サービス事業への参入が本格化するなど、新しい競争圧力が生じております。

  • 保険事業について生命保険業界においては、伝統的な保険会社に加え、インターネットのみで生命保険を販売する会社の参入も見られるほか、外資系の競業他社及び全国共済農業協同組合連合会、全国労働者共済生活協同組合連合会、日本生活協同組合連合会なども同様の生命保険商品を提供しており、競合関係にあります。
    損害保険業界においては、代理店を通して契約を獲得する従来型の保険会社に加え、ソニー損保のように電話やインターネットによるダイレクトマーケティングによって保険を販売している保険会社とも競合しております。近年は、大手既存保険会社によるダイレクトマーケットへの参入や異業種からの損害保険市場への参入なども見られます。
    保険業界において、競合他社の有する優位性には以下が含まれます。
  • 資本力と財務格付け
  • ブランド力
  • 他の金融機関との提携などによる強力なマーケティング、販売ネットワーク
  • 価格優位性
  • 顧客基盤
  • 幅広い商品及びサービス
  • 銀行事業について

ソニー銀行は個人向けの資産管理及び融資業務の提供に注力しており、個人向け金融サービス市場における激しい競争に直面しております。近年、都市銀行をはじめとする既存金融機関は、個人向け金融サービス市場での取組みにより重点を置いており、インターネットなどを利用した個人向け金融サービス業務を拡大しております。また、ソニー銀行は、多くの銀行が提供している金利よりも通常低い金利で、住宅金融支援機構と協力して長期固定金利住宅ローンを提供しているノンバンクとも競合します。また、ソニー銀行は、個人向け金融サービスの提供に関し既存証券会社やネット証券、外国為替証拠金取引業者との競争にも直面しております。ソニー銀行の顧客との主たる接点はインターネットであり、取引を対面で行うことができる金融機関を選好する顧客にはアピールしづらい可能性があります。
なお、銀行業界と証券業界の間の規制上の障壁は、現在、更に緩和されており、たとえば、共通の持株会社の下で事業を営む銀行と証券会社が顧客情報を共有することを許容し、銀行と証券会社がより幅広いサービスを提供できるようになりました。大規模な既存の金融コングロマリットに有利となる規制緩和措置は、わが国における金融サービス業界の更なる統合に繋がる可能性があります。異なる金融サービス業界間の参入障壁が継続的に緩和するにつれて、様々な国内外の金融機関が拡大しつつあるビジネスチャンスを活用しようとするため、当社はこれらの業界間の競合は激化し続けると予測しております。
こうしたわが国における金融サービス市場における競合の激化により、当社グループの事業及び業績が悪影響を受ける可能性があります。

(2) 顧客・人口動態の変化によるリスク

  • 生命保険事業について
    日本の人口の高齢化及び長期にわたる不況により、生命保険業界は全体として、解約率の上昇や新規契約の減少という影響を受けてきました。ソニー生命の商品開発及びマーケティングは、中期的には比較的安定的に推移すると見込まれている30歳代から40歳代の顧客を主たるターゲットとしておりますが、総人口の減少など人口動態の変化が、当社グループの事業及び業績に想定外の悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 損害保険事業について
    ソニー損保の主たる商品である自動車保険の市場は、横ばい傾向にあります。これは国内の新車登録台数の増加が安定しないことや、軽自動車など比較的安価な車両が保有契約台数に占める割合が増えていることから1車両あたりの保険料の平均額が減少傾向にあること、更に、契約を継続することにより割引が進行する契約者が多いことから、保険料の平均額が減少傾向にあること等が要因と考えられます。ソニー損保やその他のダイレクト損保会社は、近年マーケットシェアを伸ばしておりますが、ソニー損保の戦略は、ダイレクト損保会社が市場全体において更にマーケットシェアを拡大し続けることを前提としております。たとえば、顧客が、ダイレクト損保会社一般について、ダイレクト損保会社以外の競合他社よりも信頼性、又はサービスの水準が低いと考える場合、ダイレクト損保会社のマーケットシェアが期待どおりに成長しない可能性があります。また、ダイレクトマーケティングが顧客に受け入れられずシェアが伸び悩むような場合には、当社グループの業績に悪影響を与えます。
  • 銀行事業について
    ソニー銀行の顧客との主たる接点はインターネットです。当社グループが銀行事業において成長を持続できるか否かは、インターネット専業の金融機関によるインターネットなどを利用した銀行サービス及び金融商品仲介サービスがこれまでのように支持されていくかどうかによります。情報セキュリティ上の懸念、又はその他の理由によってインターネットの利用度が低下した場合、あるいは顧客が取引を対面で行うことができる金融機関への選好を示した場合は、インターネットなどを利用した銀行サービス及び金融商品仲介サービスに対する需要が期待どおりに成長しない可能性があります。インターネットなどを利用した銀行サービス及び金融商品仲介サービスが継続的に成長しない場合、又は成長率が低下した場合には、当社グループの成長見通し及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 個人向け金融サービス市場における技術などの進歩に対応できないリスク
個人向け金融市場は現在急速な技術的変化に晒されており、顧客の要求の変化、新商品・サービス導入の早期化、業界基準の変化などが見られます。インターネットやダイレクトマーケティングチャネルを効率的に利用できることは当社グループの成長の鍵であり、将来の成功は、適時かつ費用効率のよい態様による一部既存サービスの促進、新サービスの開発に依存しております。こうした技術的変化や顧客の要求の変化、業界基準の変化に対応できない場合、対応策への投資が費用効率の悪いものとなった場合、当社グループの事業や成長見通し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法規制の変更等によるリスク
わが国の金融サービス業界においては、規制緩和が進展しておりますが、当社グループの生命保険事業、損害保険事業、銀行事業は、それぞれ異なる規制に服しており、それぞれが独立して業務を遂行することが一般的に求められております。
法規制、会計制度、税制、慣例、金融・財政その他の政策等の将来における変更や新設・廃止と、それが当社グループの事業に与える影響は予測が不可能であり、当社がコントロールしうるものではありません。その内容によっては、当社グループの事業の制限や追加的な態勢整備コストが発生するなど、当社グループの業務運営や、業績及び財務基盤に悪影響を与える可能性があります。

(5) 生命保険契約者保護機構の負担金に係るリスク
生命保険契約者保護機構は、保険業法に基づき、生命保険会社が破綻した場合の保険契約者の保護の充実を目的に設立・事業開始された法人であり、ソニー生命を含む国内で事業を行う全ての生命保険会社が同機構に会員として加入のうえ、同機構への負担金の支払い義務を負っております。
国内の他の生命保険会社と比較して、ソニー生命の保険料収入及び責任準備金が増加する場合、ソニー生命へ割り当てられる負担金が増加する可能性があります。また、国内の他の生命保険会社が破綻した場合や、同機構定款の変更により負担金に関する条文等が変更される場合には、ソニー生命は同機構に対して追加的な負担を求められる可能性があります。これらの負担金の増加は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(6) パンデミック・大規模災害に関するリスク(気候変動に起因するものを含む)
ソニー損保は、天候の異変などにより自動車保険、火災保険において予測不能な損失を被る可能性があります。
ソニー生命も、感染症などの疫病が発生した場合の保険金等の支払い、地震、津波その他地域的な災害が人口密集地域に発生した場合に多額の保険金等の支払いが発生するリスクに晒されております。各保険子会社は、保険業法上の基準や業界の慣行、会計基準に則った危険準備金、又は異常危険準備金を積み立てておりますが、これらの準備金が実際の保険金等の支払いに十分でない可能性があります。
また、ソニー銀行も、大規模災害の発生に伴う経済情勢の悪化による貸倒れや、担保価値の下落などから貸倒引当金の積増しが必要となることなどにより、与信関連コストが増加する場合があります。
更に、物理的な損害などにより当社グループの業務が滞る可能性もあり、当社グループがこれらのリスクに適切に対応できなかった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、上述のパンデミックや大規模災害については、平均気温の上昇による激甚災害や感染症・熱中症の増加など、気候変動に起因するものも含まれます。世界的に気候変動問題への対策が加速する中、当社グループにおいても対応を進めておりますが、当社グループを含む世界的な取組みが奏功しない場合には、当社グループの業務運営や、業績及び財務基盤に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、上述の気候変動起因の大規模災害等に伴う影響に加えて、炭素税導入や気候変動に係る政策・規制の強化等への対応が不十分な投資先・与信先の資産価値の下落等の影響が考えられます。また、気候変動に係る取組みへの関心が高まるなかで、当社グループの取組みやその開示が不十分とみなされた場合には、社会的な批判の高まりにより、当社グループの事業や資金調達の条件などに悪影響を及ぼす可能性があります。

3.持株会社としてのリスク

当社は金融持株会社であり、収入の大部分は当社が直接保有している子会社からの配当となっております。一定の状況下では、保険業法、銀行法及び会社法上の規制などにより、子会社が当社に支払うことができる配当の金額が制限される場合があります。また、子会社が十分な利益を計上することができず、当社に対して配当を支払えない状況が生じた場合などには、当社はその株主に対して配当を支払えなくなる可能性があります。