ソニーフィナンシャルグループで介護事業を営むソニー・ライフケアは、
Life Focus を事業コンセプトに掲げ、ご利用者がいつまでも、安心してご自身に合った生活を送っていただけるような介護をめざしています。
具体的には、ご入居者がこれまでの人生で大切にしてきた想いや生活へのこだわりを尊重し、ご入居後も可能な限りそれらを維持することで「その方らしい生活」をお過ごしいただけるよう努めています。そして、ご入居者の豊かな生活を実現する観点で、ソニーグループとの協業の取り組みも積極的に進めています。
その一環として、ソニーグループのインハウスデザインチームである
クリエイティブセンター が、視覚障がいのある方々とともにゼロから開発した「XRキャッチボール」を、ソニー・ライフケアが運営する老人ホームのご入居者に体験いただくイベントが開催されました。
ソナーレ・アテリア久我山
「XRキャッチボール」とは
XRキャッチボールは、スマートフォンを用いて、キャッチボールのようにテンポよく、仮想のボールをやりとりする体験です。⼿から離れた仮想のボールは、相手との間に等間隔に置かれたライトを順番に点灯させながら、リズム⾳とともに相⼿の元へ⾶んでいきます。相手は、この光と音を頼りに、タイミングよく仮想のボールをキャッチします。
ソニーグループポータル | アクセシビリティ | インクルーシブデザインを通して「みんなの笑顔」の実現へ(外部リンク)
(※)アクセシビリティ:年齢、身体、環境などに関係なく、誰もが機器やサービスを簡単に利用できること
もともとは、視覚に障がいのある方にも楽しんでいただけるような、キャッチボールで得られる体験をデザインする目的で開発が進められたものですが、ソニー・ライフケアとクリエイティブセンターが協業についてコミュニケーションする中で、これを活用すれば、老人ホームで暮らす高齢者の方にも安全で楽しい体験をしていただけるのではないかとの仮説から、ホームでの体験イベントの実行につながりました。
アクセシビリティを体現する体験イベントに
イベントには、ホームから、スタッフとご入居者の10名が参加されました。まず、ホームスタッフに体験してもらい遊び方を伝授した上で、ご入居者への体験に進みました。ご入居者は、アームバンドをつけたXRキャッチボール用のスマートフォンの扱いに、最初は戸惑いを見せながらも、当日ホームを訪れたデザイナーからの説明や、ホームスタッフからのサポートを得て、それぞれに投げる、受けるの体験をされました。
体験の中では、見事にボールがキャッチされ、「バシン!」というシンバルと歓声の効果音が上がり、周囲からの歓声と拍手の中でご入居者が満面の笑みを見せられるなど、楽しいひとときを過ごされました。また、投げられたボールが「バシン」という光と音の連動やキャッチした際の振動に気づきにくい、ボールがどちらにあるかがわかりにくい、といった、高齢者による豊かな体験を提供する上での課題も認識され、デザイナーにとっても有意義な機会となりました。
【ホームスタッフの声】
ゲームを始めるまではどのような反応を示されるのか未知数でしたが、実際やってみると、まるでテーマパークのアトラクションを体験されているかのように楽しんでおられたのが印象的でした。
キャッチボールの相手から投げられた仮想ボールが近づいてくることを知らせてくれるリズム音は、ご入居者にとってタイミングを取るのにとてもよいきっかけになっていたようで、キャッチボール以外にも展開ができそうと感じました。また、スマートフォンを手に固定するアームバンドは、すぐに慣れて違和感なく使用されていました。
一方、同じくボールの接近を知らせるライトがもっとわかりやすかったらよい、あるいはボールをキャッチした際の振動はもっと強い方がよい、といったご入居者のお声をいただき、開発チームの皆さんにも生きたフィードバックができたと感じています。
また、今回の体験をとおして、ご入居者の気持ちが次第に前向きに変化していくご様子を感じることができました。
【デザイナーの声】
今回のイベントは大変に盛り上がり、キャッチボールがだれにでも親しまれる遊びであることを実感しました。また、剛速球を投げて勝ちたい方、正確なキャッチにこだわる方、相手が取りやすいように優しく投げる方など、個性を発揮できる遊びであることもわかりました。さらには、はじめてのことに戸惑いをみせるご入居者に対し、ホームスタッフの皆さんが、お一人おひとりに合わせて丁寧にサポートしてくださる様子に、高齢者に対する支援の仕方を学べたことも本イベントの収穫のひとつとなりました。
ボールを投げる際の効果音として設定している風切り音や、キャッチ成功時の歓声は、高齢者の方にとっても比較的クリアに伝わっていたように感じました。逆に、ボール操作でスマートフォンのボタンを押し続けることの難しさについての知見を得ることができ、早速ホルダーやアプリの改善につなげることができました。
視覚に障がいのある方の声をきっかけに開発されたXRキャッチボールが、グループ内で運営される事業とのコラボレーションによって、高齢者の方にも楽しんでいただけるという気付きを得られたのは、幅広い事業を展開するソニーグループだからこそといえます。
今後、介護サービスの質の向上にこうしたソニーのアクセシビリティ技術を活用することで、従来の介護サービスのあり方を変え、新しい価値創造の好機となることに期待が高まりました。